「海軍航空母艦--通常型空母と原子力空母についてのコスト効果」

アメリカの会計検査院GAOが1998年8月に出した「海軍航空母艦--通常型空母と原子力空母についてのコスト効果」は、いまだに検討に値するものではないだろうか。

 とりわけ、太平洋横断の時間と燃料、諸経費を節約できるヨコスカヘの一隻の空母の母港化について、このレポートは、米本土に6隻分の原子力空母配備に等しいものだ、とのべている。

 そして、(原子力空母以外の空母の建艦を停止する決定以前のこの時点で)、もし、通常型空母から原子力空母への交代が続くならば、「海軍は結局は、日本に原子力空母の母港化と調整すべく核対応の保守設備および関連インフラを建造すること、もしくは、海軍に原子力空母の追加を行い(横須賀)配備と同レベルのものを、この場合は米国本土からの展開として、保たせるかのいずれかを、選ばなければならないだろう。」

 <日本への空母配備の利点>として、
1973年からの横須賀配備は、太平洋における常時の展開を長距離の航海時間なしに、また危機に数日中に対応することを可能にしている、とのべ、続けて、
日本政府は、日本における米軍の維持のため円ベースによるかなりの貢献を行なっている、という。
これは特別措置法で可能となっているが、「日本はさらに新たな施設や改善のため、1979年にはじまった施設改善計画(JFIP)を通じて支払いをしている。これは両国間のいかなる条約や合意に基づくものではない。」

そしてその直後に、
「太平洋軍司令部や太平洋艦隊幹部によれば、同計画は日本における恒常的な原子力空母の母港を得る為の追加的補修施設の建設に資金を供与できる」とある。

 さらに、日本のこの(思いやり)予算の総額に(1995年に50億ドル)ふれ、
「これらの貢献は、空母維持・補修のため米海軍横須賀修理施設で、日本側の労働力により行なわれたものを含む」とし、
「現時点では、これらの施設は核修理能力を有さない」と続ける。
「もし、現在横須賀を母港としている空母が米国の母港にもどるとすれば、合衆国は全ての維持費用を支払わなければならないはめになる。
「米海軍横須賀修理施設で核関連の補修が行なわれる為には、いくつかのインフラの改善が必要であり、補修は米国の造船所労働者により、米国負担で、ということになろう。

その3
アメリカの会計検査院GAOが1998年8月に出した「海軍航空母艦--通常型空母と原子力空母についてのコスト効果」は、<非常に長い同意(とりつけ)過程>として、
「太平洋司令部将校によれば、横須賀の施設改善は日本の施設改善計画により出資される。しかしながら、同意を得るのは。極めて長い時間を要する。例えば、家族住居計画の同意と出資を得るのに、十年かかった。同司令部要員によれば、原子力空母の母港化施設の改善についての同意を得るのに、7年から15年かかるだろう、という。

またGAO報告は<他の海外の母港>の項で、
「海軍の1994年の海外配備計画は、原子力空母を海外において前進配備させるのは、提供国の反対の可能性、および修理のため原子力空母の本国返送を必要とするであろう同空母の複雑性とから、問題をはらむ。
 同報告は、海外に原子力空母補修施設を建設するのは高価に付き、政治的に受け入れられないものとなろう、と予測する。

続いて<西海岸への空母の地域的配備を行うこと>として、
(日本への空母の前身配備は、それがなければ西海岸を母港とする空母6隻分に匹敵するとし)
「(太平洋における)地域的配備の水準を75%におとしても、4隻を西海岸に追加配備しなくてはならない。

<省のコメントと我々の評価>では
「国防省は日本における原子力空母の保持により惹起する諸困難についての討論に同意見である。同省によれば、(原子力空母補修に伴う)インフラの変更は、推進力以外のプラント補修は横須賀の補修施設により継続されるであろうから、我々が予想するほど重要なことではない、という。同省は、もし原子力空母が日本を母港とするならば、補修計画を原子力空母の部隊を推進プラントを保持するより高度な力量をもったものに、つまり同部隊を‘fly-away’チームに増強し、定期的に同船を本国にdepot-levelの補修のため返送し、別の空母と代替させるものへと調整できよう、という。

 「我々の、原子力空母の日本母港化についての討論の基礎の一部は、海軍の現行の(空母)維持戦略である。海軍がこの戦略を変更していないことに留意し、さらに、原子力空母日本母港化のためには、基地の補修能力に相当な変更が必要だと考える。我々は海軍がNorth Island海軍航空基地への原子力空母母港化を決定した時、重要かつ高額のインフラ変更を行ったことを指摘する。
「国務省は、同報告についての唯一のコメントで、原子力空母の日本の港への入港は日本で要注意の問題であり、もし日本に原子力空母の母港を望むならば、米国政府は日本政府との間で慎重な協議を品ければならないだろう、としている。」

(この段階でのコメント)会計検査院が1998年8月の時点で、
「太平洋軍司令部や太平洋艦隊幹部によれば、施設改善計画は、日本における恒常的な原子力空母の母港を得る為の追加的補修施設の建設に資金を供与できる」とのべているのは、極めて注意を要する。
「日本政府の資金で、原子力空母の母港のための施設を建設する」。米軍が日本政府との根回しを行って、ある程度の回答を得たから、こういう報告をしたのではないか。
 アメリカ政府の省庁の一機関ではないGAOが、議会に責任をもった報告をしているとすれば、当然、GAOは、日本との接触の結果をくわしく聞いたはずだ。
GAOにたいし、どのような経過を経て、誰を相手に交渉した結果、米太平洋軍司令部や太平洋艦隊幹部が、こうした証言をしたのか、ぜひ聞きたい。外国に駐留する軍隊の、編成を大きく変えることにその国が金を出すかどうか、という問題であり、外交問題になりうることだ。(それとも、あの国は何とでもなる、とGAOも考えているのか)
そして、日本政府、外務省が横須賀市に、やっぱり原子力空母が来る、と正式に連絡したのは、それから7年もたってからだ。(下段参照)
 「2005年10月28日、外務省北米局長より横須賀市長宛に、米国より空母キティホー クに替わりニミッツ級(原子力)空母が2008年横須賀に到着予定である旨の連絡があった。」
 もし、日本政府がこうした米国(軍部)からの打診を受けていながら、まだ何も聴いていない、としらを切りとおしてきたとすれば、それまた大問題だ。
 沖縄返還における「核密約」同様、国民の目から隠れて交渉してきた可能性があるし、市民の目から隠すべき内容がある、と考えてもおかしくない。
 例えば、このGAO報告は、資金だけでなく、原子力空母の修理施設の立地や、波止場のメンテの為のクレーン、電気水道の改善、港の浚渫、200家族分の住宅、さらには乾式ドックについてふれている。
 こうして、原子力空母の補修を横須賀で行うことについて、何がどれだけでき、むずかしいのか、アメリカの会計検査院が、海軍などの判断をもとめ、まとめている。
 今回、米軍は原子力空母の原子炉関係の補修を横須賀ではやらない、といいます。しかし、原子炉の点検のつど太平洋を横断するのでは、通常型空母に比べ原子力空母がいかにすぐれているかという、これまでの説明にも反することになる。
 日本側の核問題にたいする受け止め方を注意して扱え、とGAO報告にあるとおり、とりあえず原子炉の補修ぬきで日本に「ならし寄港」を行い、十分効果があったところで原子炉補修の施設も建設する、その可能性があるのではないか。それについての密約の可能性すら否定できない。
 アメリカのもつ原子力空母の数が減少し、逆に太平洋における配備を増やしている点からも、横須賀における原子炉の点検・補修について、このGAO報告をふくめて、国会でも市民運動ベースでも検討する余地がある、と考える。
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2004年3月に、ファーゴ米太平洋艦隊司令官原子力空母の日本国への配備の可能
性を示唆(31日下院軍事委員会の公聴会)。
2005年2月、クラーク米海軍作戦部長がキティ・ホーク後継艦に原子力空母配備の
方針を表明。
2005年7月27日、訪問した蒲谷亮一・横須賀市長に河相周夫北米局長、「キティー
ホークの後継艦については米政府として何ら決定していないと承知している」と答えた。
外務省北米局長より横須賀市長宛に「キティホーク・ホークの後継艦について」の連絡
文書
 2005年10月28日、外務省北米局長より横須賀市長宛に、米国より空母キティホー
クに替わりニミッツ級(原子力)空母が2008年横須賀に到着予定である旨の連絡があ
った。
http://www3.ocn.ne.jp/~sakuma21/h

その2

GAO‘98レポートは、ヨコスカヘの原子力空母母港化について、次のように続ける。

「ヨコスカヘの原子力空母の恒常的母港化は、大規模な基地再編を必要とする、それは、原子力推進装置の補修・支援施設、電気水道の改善、港の浚渫、より深度の牽引船の収納用進入路?(approach to accommodate a deeper draft ship)、などだ。また、家族用住居や支援施設の追加も必要だ。

「費用は、日本のJFIPを通じて得られるだろうが、同意を得る筋道は長期のものとなろう。国務省は、米国が原子力空母の母港を日本に求めるとすれば、日本における原子力艦船の入港が敏感な問題であり、日本政府との注意深い協議を必要とするものだ、と留意した。

(San DiegoのNorth Islandの海軍航空基地とLong Beachの海軍造船所およびPugetの海軍造船所についての、核修理施設について比較し、North Islandでは新施設がサッカー場4.5個分の広さ、2.6億ドルを必要とする、とのべ、つづけて)

「太平洋司令部、太平洋艦隊、海軍本省の施設・後方支援の将校によれば、核補修施設のほか、横須賀では原子力空母母港化を支える追加的改善が必要だ。例えば、より大きく強靭な埠頭は、より巨大で重量のある原子力空母と波止場のメンテの為のクレーンとが必要だ。」
Commercial powerも、純粋な水も、として、
「他の改善には、乾式ドックの調整と関連施設が含まれる。しかし、海軍は横須賀で原子力空母を支援するのに必要な乾式ドックのため何が必要か、まだ調査していない。」とのべる。

続く、<限られた面積と追加施設>では、狭い基地面積と立て込んでいる施設にふれ、
「太平洋司令部将校は、横須賀には追加施設の余地がない、という」とのべ、代替措置が必要だとする。
「国務省官僚は、横須賀には空白がとぼしく、それが原子力空母母港化をむずかしくしている、と語る」
「横須賀のまちが基地に接近しているのも、基地の拡張を制約している」
「現時点で、(太平洋艦隊の陸上施設管理の副参謀長はいう)1,200以上の住居が不足しており、原子力空母母港化で200家族がさらに必要だ。
「住居問題は、核関連施設の補修期間の数百人の労働者による追加でさらに悪化しよう。

その4

アメリカの会計検査院GAOが1998年8月に出した「海軍航空母艦--通常型空母と原子力空母についてのコスト効果」は、<非常に長い同意(とりつけ)過程として、
「太平洋司令部将校によれば、横須賀の施設改善は日本の施設改善計画により出資される。しかしながら、同意を得るのは。極めて長い時間を要する。

例えば、家族住居計画の同意と出資を得るのに、十年かかった。同司令部要員によれば、原子力空母の母港化施設の改善についての同意を得るのに、7年から15年かかるだろう、という。

またGAO報告は<他の海外の母港の項で、
「海軍の1994年の海外配備計画は、原子力空母を海外において前進配備させるのは、提供国の反対の可能性、および修理のため原子力空母の本国返送を必要とするであろう同空母の複雑性とから、問題をはらむ。
 同報告は、海外に原子力空母補修施設を建設するのは高価に付き、政治的に受け入れられないものとなろう、と予測する。

続いて<西海岸への空母の地域的配備を行うこととして、
(日本への空母の前進配備は、それがなければ西海岸を母港とする空母6隻分に匹敵するとし)
「(太平洋における)地域的配備の水準を75%におとしても、4隻を西海岸に追加配備しなくてはならない。

<省のコメントと我々の評価>では

「国防省は日本における原子力空母の保持により惹起する諸困難についての討論に同意見である。同省によれば、(原子力空母補修に伴う)インフラの変更は、推進力以外のプラント補修は横須賀の補修施設により継続されるであろうから、我々が予想するほど重要なことではない、という。同省は、もし原子力空母が日本を母港とするならば、補修計画を原子力空母の部隊を推進プラントを保持するより高度な力量をもったものに、つまり同部隊を‘fly-away’チームに増強し、定期的に同船を本国にdepot-levelの補修のため返送し、別の空母と代替させるものへと調整できよう、という。

 「我々の、原子力空母の日本母港化についての討論の基礎の一部は、海軍の現行の(空母)維持戦略である。海軍がこの戦略を変更していないことに留意し、さらに、原子力空母日本母港化のためには、基地の補修能力に相当な変更が必要だと考える。我々は海軍がNorth Island海軍航空基地への原子力空母母港化を決定した時、重要かつ高額のインフラ変更を行ったことを指摘する。
「国務省は、同報告についての唯一のコメントで、原子力空母の日本の港への入港は日本で要注意の問題であり、もし日本に原子力空母の母港を望むならば、米国政府は日本政府との間で慎重な協議をしなければならないだろう、としている。」
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なお、同報告について、ピース・デポの「核兵器・核実験モニター」第248号(2005
年12月15日発行)は、報告書の要点として、
原子力空母のウソを暴く:横須賀母港化は困難で高くつく--98年「GAO報告
書」--http://www.peacedepot.org/nmtr/bcknmbr/nmtr248.pdf
を紹介している。

以前、町田平和委員会の当HPでは、横須賀市議会の佐久間議員による同氏のHP(2004年時点?)におけるこの報告の抄訳をもとに、全訳をしたい旨メールを送ったが、そのままになっていた。

また、安保廃棄神奈川県統一促進会議のHPでは、
http://homepage1.nifty.com/anpohaikikanagawa/gaidobook.htm
「米会計検査院(GAO)は、横須賀に原子力空母を配備した場合の通常動力空母との「費用対効果」を議会に報告し、原子力空母にした場合に必要な諸設備の整備や新設(原子力推進力の修理機能、バースの延長、維持施設など)についての必要性をのべ、それらの整備に7〜10年かかるとしている。」
としているが、整備に7〜10年かかるのではなく、了承に、のミスだろう。

[PDF] 神奈川の基地と米軍再編 神奈川の基地と米軍再編 調査レポート 調査 ...(共産党神奈川県議団)では、「放射能廃棄物の貯蔵施設などの必要性を指摘している」とあるが、上記ピース・デポの248号を「放射」で検索した限りでは、この記述が相当する部分は見つからなかった。

ちなみに、「ピース・デポ 「核兵器・核実験モニター gao」でgoogle検索したが、3件ヒットしただけ。
「モニター 」バックナンバーそのもの2件と、薔薇、または陽だまりの猫:blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005であった。

横須賀市議会の議事録での「会計検査院 gao 1998 空母」の検索で、ヒットはゼロ。
同じく「会計検査院 佐久間 1998 空母」でもゼロ。
「会計検査院  1998 空母」で2件。
(1)成12年 第1回定例会( 3月) 03月03日−04号 1
P.260 ◆ 3番(根岸峰夫) ---これは無関係で、
(2)平成15年 第1回定例会( 3月) 03月05日−04号 で、共産党のねぎし
かずこ市議が「米議会に提出された会計検査院報告でも、横須賀に原子力空母を配備
する場合の通常型空母との費用対効果を示し、空母専用バース等の強化が必要とされ
るとしています。」と追及している。

さらに、国会議事録によると、
「会計検査院 1998 空母」で、
「見当たりません。条件を変更して再度検索してください。」であった。
「gao 1998 空母」でも、
「横須賀 1998 空母」でも同様である。

以前、同市議会の議事録から浚渫土による「領土問題」をこの欄で取り上げたが、これも国会での追及はなかったようだ。これは治外法権に十分相当する問題であり、今回の問題は予算編成権にもかかわる問題だと思う。

いずれにせよ、こうした資料が、いち早く、十分に取り上げられることが必要ではないか、と考えざるをえない。

もちろん、全訳がすでに公にされている可能性もある。その節はご容赦を。




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