「環境」や「空域」で、基地撤去に迫る

<転載>08年4月におこなわれた、日本平和委員会「平和新聞」のアンポウォッチングの筆者だった松尾高志さんの論文集発行を記念しておこなわれた追悼の集いで、追悼論文集「ショートピース」が配布されました。その中に町田平和委員会会員が投稿した文を編集者の了解を得て転載します。

「環境」や「空域」で、基地撤去に迫る

    町田平和委員会 2008.01.15

2,3年前、町田平和委員会HPの「更新塚」を見て涙が出たよ、と言って下さった松尾さん。この数ヶ月考えてきたことを記して墓前に捧げます。多分、「君ねえ、ココとココの所は」と、すかさずおっしゃるでしょうね。

最近(1)ピースデポの受賞(韓国の市民団体から)、日韓市民団体の基地汚染調査(2)米国での沖縄ジュゴン訴訟(3)沖縄県宜野湾市の米政府への米軍普天間基地早期返還・撤去訴訟(の検討)(4)JEGS(日本環境管理基準)に関する国会質疑などから、若干考えさせられた。基地に関し、騒音だけでなく環境面などからもアプローチを強める必要を感じ、以下の作業を行なった。

Environmental Governing Standards (EGS)の韓国版と日本版(USFJ- EGS)をダウンロード。OCONUS=Outside of the Continental United States(大陸外)基地環境順守アセスに関する議定書案。

日本版目次<第1節空気排出管理 第2節文化的資源の管理 第3節 危険物管理 第4節 有害廃棄物管理 第5節  天然資源の管理 第6節  他の環境問題 第7節 農薬管理 第8節 石油、油、潤滑油(POL)の管理 第9節 固形廃棄物管理 第10節 貯蔵タンクの管理 第11節 有害物質管理 第12節 廃水管理 第13節 水質管理>は、韓国版と全く同じ。

各500ページ余りで、細部は当然異なる。ネット上で日・韓のほか、ドイツ(空軍用)、トルコ、クウェート、英国、イタリアの同様の議定書(草案)が確認できた。

なお、(a)沖縄のキャンプバトラー等発電設備検査などの国際入札でのEGS準拠 (b)国会質疑でJEGSの「訳文及び解説書を作成し公表するか否かについては、第一義的には合衆国軍隊が判断」との政府答弁(02年)(c) 軍内部の環境対策について「危惧種へのより大きな注目」を払い、「汚染は、軍部隊がいつ、どのように訓練できるか」に関する規制を促進、とのべた01年米バルティモア国際軍事騒音会議(国防省提唱、米陸軍健康促進・予防医学センター協力)がある。  再編と汚染は当然重なる。閉鎖基地では、米軍人・軍属・家族の安全は担保されても、基地内外の汚染実態の調査と対策について、配備・提供国の双方の負担に関する協議と合意が必要になる。基地機能の集中・強化、特に同盟国軍隊との司令部統合や共同使用により、発生する汚染の対策がいかなる基準で行われるか、再検討も必至だ。「騒音」基準もEGSに追加されよう。重大な人権・環境問題である以上、地位協定優先の立場はますます根拠を失うに違いないし、そうさせるべきだ。

韓国では、返還された在韓米軍基地23か所中12か所が公開中だ。米国は地位協定(SOFA)で回復義務がないと言うが、韓国は公式に「環境調査と汚染解消協議のための手続き合意書」を基に米国に汚染解消費用の負担を求めた。汚染回復の合意がないまま警備・管理任務を引き継いだ3基地では一応、「合意がなければ返還を受入れない」という(Yahoo!ニュース 環境問題)。キャンプ・エドワードの土壌と地下水汚染は総面積の8.3%・2万平方m余、総汚染量は6万立方m弱に達した(YONHAPNEWS 07/12/20)という。

 安保体制下のわが国は、基地汚染問題で韓国並みの合意に至っていない。騒音をふくめた基地問題をより国際的な場で追及し(*)何らかの判断を得て、また地方自治体からも規制の輪を強めていくことが必要だ。さもないと、「思いやり予算」で基地をサポートした挙句、立つ鳥跡を濁す米軍基地の後始末の為、相当額の出費を強いられることとなる。

(*)国際人権規約の「市民的及び政治的権利に関する国際規約の選定議定書」によると、権利侵害を受けた個人の申立を国際機関が受理し、審査することができる(「軍隊と住民--立川・横田基地裁判を中心に」榎本信行 日本評論社1993=「補章2」は町田平和委HP参照)、および国連人権規約・同規約人権委員会の活用を訴えた鈴木亜英弁護士の「国際人権水準から見た日本」(「救援新聞」06年7月15日付)参照。

米本土McClellan空軍基地跡では、01年に閉鎖後「航空機の補修等で使用した溶剤及び廃棄物等によって約12km2の敷地はVOC(揮発性有機化合物),重金属のみならず一部は放射能で汚染されている。。1980年代から地下水揚水、土壌ガス吸引、覆土、掘削除去等継続中で“今後更に10〜15年必要の見通し”だ」という(2004(社)土壌環境センター、視察報告=村井行男氏)。08年8月の原子力空母横須賀配備や浚渫に関連して、横須賀港の汚染問題の徹底調査と問題の国際化が必要だ。この問題を放置したまま戦時中の軍廃棄物処理に群がる、ハイエナの跋扈を許していてはダメだ。「歓迎されないところ」に海外基地は置かないという以上、より規制力が強く「安全・安心」にマッチした環境基準や、当たり前の外交への努力を積み重ねよう。相手は何しろ「人権大国」なんだから。

日米同盟の現地司令官の「米軍は日本の空域のわずか10パーセントしか使っていない」「どちらかと言えば小さなものだ」というStars and Stripes(06年7月7日)発言も、謝罪・撤回ものだ。「一定の空域ブロックの一時的管理は、横田ラプコンより所沢の東京航空管制センターに委譲されるだろう」と在日米軍現行作戦主任Marine Maj. Jeffrey Kawadaが述べたが(同上)、管制権は自衛隊に移されつつある。

単なる「日本側への返還」という要求は、同盟の司令部統合への支援ともなりうる。東京平和委パンフ(96年)が明示したように横田エリアの返還要求を、両軍の関連する訓練空・水域の返還・解消と結合し、かつ国交省への移管を求めるべきだ。

78年自衛隊使用開始の同エリア北部(H区域ホテル)でネット検索したが、国会質疑以外ノーヒットだ。「空域」で、戦闘機演習に伴う環境汚染、危険性(特に民間機とのニアミス)、経済的負担などを徹底的に調べ、告発しよう。主権侵害の事実を内外、特に年間1700万人の海外旅行者にターミナルで訴えよう。石原都知事にグングン引っ張られる時代ではない。羽田第4滑走路運用開始にあわせた空域2割返還だけで、お茶を濁されてはなるまい。

自治体との連携で、地位協定改訂の具体化にまで踏み込むべきだ。安保条約=軍事同盟の「自動延長方式」も、検討し返上すべきだ。

 追悼文にかこつけて、原子力空母母港化が始まる08年新春の小生の夢を墓前に供えました。いろんな所に松尾さんまかれていった種が花開かせ、9条を根付かせる手始めの一年に、と願っています。町田平和委HPに松尾さんのお墓を設け、毎年お参りしますね。「べ-グンサイヘン・コクミンタイヘン。アンポ〜カイショウ。チーン」と唱えつつ。辛口の批判を待っています。





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