国連軍地位協定(日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定)

東京
1954年2月19日

  1951年9月8日に日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・
アチソンとの間に交換された公文において,同日サン・フランシスコ市で署名された
日本国との平和条約の効力発生と同時に,日本国は,国際連合が国際連合憲章に従つ
てとるいかなる行動についてもあらゆる援助を国際連合に与えることを要求する同憲
章第二条に掲げる義務を引き受けることになると述べられているので,

 前記の公文において,日本国政府は,平和条約の効力発生の後に一又は二以上の国
際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には,当該一又は
二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近
において支持することを日本国が許し且つ容赦することを確認したので,

 国際連合の軍隊は,すべての国及び当局に対して国際連合の行動にあらゆる援助を
与えるよう要請した,1950年六月二十五日,六月二十七日及び七月七日の安全保障理
事会決議並びに1951年二月一日の総会決議に従う行動に今なお引き続き従事している
ので,また,

 日本国は,朝鮮における国際連合の行動に参加している軍隊に対し施設及び役務の
形で重要な援助を従来与えてきており,且つ,現に与えているので,

 よつて,これらの軍隊が日本国の領域から撤退するまでの間日本国におけるこれら
の軍隊の地位及び日本国においてこれらの軍隊に与えられるべき待遇を定めるため,
この協定の当事者は,次のとおり協定した。

   第一条

 この協定に別段の定がある場合を除く外,この協定の適用上次の定義を採択する。

(a)「国際連合の諸決議」とは,1950年六月二十五日,六月二十七日及び七月七日
の国際連合安全保障理事会決議並びに1951年二月一日の国際連合総会決議をいう。

(b)「この協定の当時者」とは,日本国政府,統一指令部として行動するアメリカ
合衆国政府及び,「国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣している国の政府」
として,この協定に受諾を条件としないで署名し,「受諾を条件として」署名の上こ
れを受諾し,又はこれに加入するすべての政府をいう。

(c)「派遣国」とは,国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しており又は将
来派遣する国で,その政府が「国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣している
国の政府」としてこの協定の当事者であるものをいう。

(d)「国際連合の軍隊」とは,派遣国の陸軍,海軍又は空軍で国際連合の諸決議に
従う行動に従事するために派遣されているものをいう。

(e)「国際連合の軍隊の構成員」とは,国際連合の軍隊に属し現に服役中の人員で
日本国内にある間におけるものをいう。

(f)「軍属」とは,派遣国の国籍を有し,且つ,国際連合の軍隊に雇用され,これ
に勤務し,又はこれに随伴する文民で,日本国内にある間におけるもの(日本国に通
常居住する者を除く。)をいう。

(g)「家族」とは,次の者で日本国内にある間におけるものをいう。

 (i)国際連合の軍隊の構成員又は軍属の配偶者及び二十一才未満の子

 (ii)国際連合の軍隊の構成員又は軍属の父,母及び二十一才以上の子で,その生
計費の半額以上をこれらの者に依存するもの


   第二条

 日本国において,日本国の法令を尊重し,及びこの協定の精神に反する活動,特に
政治的活動を慎むことは,国際連合の軍隊並びに同軍隊の構成員,軍属及び家族の義
務である。派遣国の当局及び国際連合軍司令部司令官は,この目的のため適当な措置
を執らなければならない。

   第三条

1 本条の規定に従うことを条件として,日本国政府は,この協定の適用上,国際連
合の軍隊の構成員,軍属及び家族に対し,日本国への入国及び日本国からの出国を許
可する。国際連合軍司令部は,日本国政府に対し,入国者及び出国者の数,入国及び
出国の日付,入国の目的並びに滞在予定期間を適切に通告しなければならない。

2 国際連合の軍隊の構成員は,旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外
される。国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族は,外国人の登録及び管理に関する
日本国の法令の適用から除外される。但し,日本国の領域に永久的な居所又は住所を
要求する権利を取得するものとはみなされない。

3 国際連合の軍隊の構成員は,日本国への入国又は日本国からの出国に当つて,次
の文書を携帯しなければならない。

(a)氏名,生年月日,階級及び番号,軍の区分並びに写真を掲げる身分証明書

(b)その個人又は集団が国際連合の軍隊の構成員として有する地位及び命令された
旅行の証明となる個別的又は集団的旅行の命令書

4 国際連合の軍隊の構成員は,日本国にある間の身分証明のため,前記の身分証明
書を携帯していなければならない。身分証明書は,日本国の当局が要求するときは,
呈示しなければならない。

5 軍属は,その旅券に自己の身分及び自己の属する機関の記載を受けていなければ
ならない。

6 軍属及び家族は,日本国にある間の身分証明のため,日本国の当局が要求すると
きは,その旅券を相当な期間内に呈示しなければならない。

7 本条に基いて日本国に入国した者の身分に変更があつてその者が前記の入国の権
利を有しなくなつた場合には,派遣国の当局は,日本国の当局にその旨を通告するも
のとし,また,できる限りすみやかにその者を日本国政府の負担によらないで日本国
から退去させなければならない。但し,その者が日本国の当該法令に従つて日本国に
とどまることを許可される場合は,この限りでない。

8 日本国が正当な事由により国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族の日本国から
の退去を要請したときは,当該派遣国の当局は,その者を遅滞なく日本国から退去さ
せる責任を有する。

   第四条

1 この協定の適用上,国際連合の軍隊によつて,同軍隊のために又は同軍隊の管理
の下に運航される船舶及び航空機は,第二十条に定める合同会議によつて合意される
港又は飛行場に入港料又は着陸料を課せられないで出入する権利を与えられる。この
協定による免除を与えられない貨物又は旅客がその船舶又は航空機で運送されている
ときは,日本国の当局にその旨の通告を与えなければならず、その貨物又は旅客は,
日本国の法令に従つて日本国に入らなければならない。

2 1に掲げる船舶及び航空機,国際連合の軍隊及び軍属用の公用車両,同軍隊の構
成員,軍属及び家族並びにこれらの者の車両は,第五条に従つて同軍隊が使用してい
る施設及び区域に出入し,これらのものの間を移動し,及びこれらのものと1に掲げ
る港又は飛行場との間を移動する権利を与えられる。

3 1に掲げる船舶が日本国の港に入る場合には,日本国の当局に適当な通告をしな
ければならない。その船舶は,強制水先を免除される。もっとも,水先人をしようし
たときは,応当する料率で水先料を支払わなければならない。

   第五条

1 国際連合の軍隊は,日本国における施設(当該施設の運営のため必要な現存の設
備,備品及び定着物を含む。)で,合同会議を通じて合意されるものを使用すること
ができる。

2 国際連合の軍隊は,合同会議を通じ日本国政府の同意を得て,日本国とアメリカ
合衆国との間の安全保障条約に基いてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及
び区域を使用することができる。

3 国際連合の軍隊は,施設内において,この協定の適用上必要な且つ適当な権利を
有する。国際連合の軍隊が使用する電波放射の装置が用いる周波数,電力及び類似の
事項に関するすべての問題は,合同会議を通じて相互間の合意により解決しなければ
ならない。

4 国際連合の軍隊が1の規定に基いて使用する施設は,必要でなくなつたときはい
つでも,当該施設を原状に回復する義務及びいずれかの当事者に対する又はその者に
よる補償を伴うことなく,すみやかに日本国に返還しなければならない。この協定の
当事者は,建設又は大きな変更に関しては,合同会議を通じ別段の取極を合意するこ
とができる。


    第六条

 国際連合の軍隊,並びに同軍隊の構成員,軍属及び家族は,日本国政府が有し,管理し,又は規制する公益事業及び公共の役務の利用については,国際連合の軍隊は,日本国政府の各省その他の機関に当該時に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

   第七条

1 日本国は,派遣国が国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族に対して発給した運転許可証,運転免許証又は軍の運転許可証を,運転者試験又は手数料を課さないで,有効なものとして承認するものとする。

2 国際連合の軍隊及び軍属及び軍属用の公用車両は,明確な国籍の標示及び番号を付けていなければならない。

3 国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族の私有車両は,日本国民に適用される条件と同一の条件で取得する日本国の登録番号標を付けていなければならない。

   第八条

 国際連合の軍隊は,同軍隊の構成員,軍属及び家族が利用する軍事郵便局を,日本国内にあるこれらの軍事郵便局並びにこれらの軍事郵便局と派遣国が日本国外に設置し,及び運営する他の郵便局との間の郵便物の送達のため,同軍隊が使用している施設内に設置し,及び運営する権利を有する。


   第九条

1 歳出外の資金による諸機関で国際連合の軍隊が公認し,及び規制するものは,同軍隊の構成員,軍属及び家族の利用に供するため,同軍隊が使用している施設内に設置することができる。これらの諸機関は,この協定の別段の定がある場合を除く外,日本の規則,免許,手数料,租税又は類似の管理に服さないものとする。

2 これらの諸機関による商品及び役務の販売には,日本の租税を課さず,これらの諸機関による商品及び需品の日本国内における購入には,日本の租税を課する。

3 これらの諸機関が販売する物品は,日本国の当局及び国際連合の軍隊が相互間で合意する条件に従つて処分を認める場合を除く外,これらの諸機関から購入することを認められない者に対して日本国内で処分してはならない。

4 所得税,地方住民税及び社会保障のための給付金を源泉徴収して納付するための義務並びに,相互間で別段の合意をする場合を除く外,賃金及び書手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件,労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は,日本国の法令で定めるところによらなければならない。

5 1に定める諸機関は,日本国の当局に対し,日本国の税法が要求するところにより資料を提供するものとする。

6 これらの諸機関は,第十一条に定める軍票の使用を認められる者との取引において,軍票を使用することができる。これらの諸機関は,日本国内の外国為替銀行に外国通貨の預金勘定をつことができない。但し,合同会議を通じて別段の合意をする場合は,この限りでない。



   第十条

1 国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族は,日本国政府の外国為替管理に服さなければならない。

2 1の規定は,外国為替又は外貨証券で,派遣国政府の公金であるもの,国際連合の軍隊の構成員及び軍属がこの協定に関連して勤務し,若しくは雇用された結果取得したもの又はこれらの者及び家族が日本国外の源泉から取得したものの日本国内又は日本国外への移転を妨げるものとして解してはならない。

3 国際連合の軍隊の当局及び派遣国政府は,2に定める特権の濫用又は日本国の外国為替管理の回避を防止するため適当な措置を執らなけらばならない。

   第十一条

1 派遣国によつて認可された者は,同派遣国が使用している施設内における相互間の取引のため,軍票を使用することができる。但し,その使用に当つては,その軍票を発行した国で,自国通貨をもつてその軍票を表示しているものの規則に従うものとする。国際連合の軍隊は,軍票を発行した国の規則が許す場合を除く外,許可された者が当該軍票を用いる取引に従事することなを禁止するよう適当な措置を執らなけらばならない。日本国政府は,認可されない者が軍票を用いる取引に従事することを禁止するため必要な措置を執らなければならず,また,要すれば国際連合の軍隊の援助を得て,軍票の偽造又は偽造軍票の使用に関与する者で日本国の当局の裁判所に服すべきものを逮捕し,及び処罰しなけらばならない。

2 国際連合の軍隊は,許可されない者に対し軍票を行使する同軍隊の構成員,軍属又は家族を法の適当な手続に従って逮捕し,及び処罰しなければならず,また,日本国内における軍票の許されない使用の結果として,その認可されない者又は日本国政府若しくはその機関に対していかなる義務をも負うことはない。

  第十二条

1 国際連合の軍隊は,同軍隊が日本国において保有し,使用し,又は移転する財産について租税又は類似の公課を課せられない。

2 国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族は,これらの者が同軍隊に勤務し,又は同軍隊若しくは第九条に定める諸機関に雇用された結果受ける所得について,日本国政府又は日本国にあるその他の課税権者に日本の租税を納付する義務を負わない。本条の規定は,これらの者に対し,日本国の源泉から生ずる所得についての日本の租税の納付を免除するものではなく,また,派遣国の所得税のために日本国に居所を有することを申し立てる当該派遣国の市民に対し,所得についての日本の租税の納付を免除するものではない。

3 2に掲げる者が国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族であるという理由のみによつて日本国にある期間は,日本の租税の賦課上,日本国に居所又は住所を有する期間とは認めない。

4 国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族は,これらの者が一時的に日本国にあることのみに基いて日本国に所在する有体の動産又は証券に化体された財産の保有,使用,これらの者相互間の移転又は死亡による移転についての日本国における租税を免除される。但しこの免除は,投資若しくは事業を行うため日本国において保有される財産又は日本国において登録された無体財産権には適用しない。本条の規定は,私有車両による道路の使用について納付すべき租税の免除を許与する義務を定めるものではない。


   第十三条

1 国際連合の軍隊,同軍隊の構成員,軍属及び家族並びに第九条に定める諸機関は,この協定に別段の定がある場合を除く外,日本国の税関当局が執行する法令に服さなければならない。

2 国際連合の軍隊又は第九条に定める諸機関がもつぱら同軍隊若しくはこれらの諸機関の公用のため又は同軍隊の構成員,軍属及び家族の使用のため輸入するすべての資材,需品及び備品は,関税その他の課徴金の免除を受けて日本国に入れることを許される。

3 2に掲げる物を輸入するときは,国際連合の軍隊は,合同会議が決定する形式を有し,権限のある者により署名され,且つ,これらの物が2に述べる目的のために輸入されるものである旨を証する証明書を日本国の税関当局に提出しなければならない。

4 国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族に仕向けられ,且つ,これらの者の私用に供せられる財産には,関税その他の課徴金を課する。但し,次のものについては,関税その他の課徴金を課さない。

(a)国際連合の軍隊の構成員若しくは軍属が日本国で勤務するため最初に到着した時に輸入し,又は家族が同軍隊の構成員若しくは軍属と同居するため最初に到着した時に輸入するこれらの者の私用のための家具及び家庭用品並びにこれらの者が入国の際持ち込む私用のための身回品

(b)国際連合の軍隊の構成員又は軍属が自己又はその家族の私用のために輸入する自動車両及び取替用部品

(c)国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族の私用のため軍事郵便局を通じて日本国に郵送される合理的な数量の衣類及び家庭用品。但し,その衣類及び家庭用品は,これらの者が属する派遣国において日常用として通常購入される種類のものに限る。

5 2及び4で許可する免除は,物の輸入の場合にのみ適用するものとし,関税及び内国消費税が既に徴収された物を購入する場合に,当該物の輸入の際税関当局が徴収したその関税及び内国消費税を払いもどすものと解してはならない。

6 税関検査は,次のものの場合には行わないものとする。

(a)命令により日本国に入国し,又は日本国から出国する国際連合の軍隊の部隊又は同軍隊の構成員

(b)公用の封印がある公文書

(c)政府の船荷証券により船積される軍事貨物及び軍事郵便路線上にある郵便物

7 この協定に基き関税その他の課徴金の免除を受けて日本国に輸入された物は,日本国及び国際連合の軍隊の当局が相互間で合意する条件に従つて認める場合を除く外,どの協定に基き関税その他の課徴金の免除を受けて当該物を輸入する権利を有しない者に対して日本国内で処分してはならない。

8 2及び4に基き関税その他の課徴金の免除を受けて日本国に輸入された物は,関税その他の課徴金の免除を受けて再輸出することができる。

9 国際連合の軍隊は,日本国の当局と協力して,本条に従つて同軍隊,同軍隊の構成員,軍属及び家族に与えられる特権の濫用を防止するため必要な措置を執らなければならない。

10(a)日本国の当局及び国際連合の軍隊は,日本国の税関当局が執行する法令に違反する行為を防止するため,調査の実施及び証拠の収集について相互に援助しなければならない。

(b)国際連合の軍隊は,日本国の税関当局によつて又はこれに代つて行われる差押を受けるべき物件がその税関当局に引き渡されること確保するため,可能なすべての援助を与えなければならない。

(c)国際連合の軍隊は,同軍隊の構成員,軍属又は家族が納付すべき関税,租税及び罰金の納付を確保するため,可能なすべての援助を与えなければならない。

(d)国際連合の軍隊に属する財産で,日本国の関税又は財務に関する法令に違反する行為に関連して日本国の税関当局が差し押えたものは,その財産が属する軍隊の当局に引き渡さなければならない。

  第十四条

1 現地で供給される国際連合の軍隊の支持のため必要な資材,需品備品及び役務で
その調達が日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞があるものは,日本国の権限のある
当局との調整の下に,また,望ましいときは日本国の権限のある当局を通じて又はそ
の援助を得て,調達しなければならない。

2 国際連合の軍隊による又は同軍隊のための資材,需品,備品,役務及び労務の調
達に関する契約から生ずる紛争でその契約の当事者によつて解決されないものは,調
停のため合同会議に付託することができる。但し,本項の規定は,契約の当事者が有
することのある提訴の権利を害するものではない。

3 国際連合の軍隊又は同軍隊の公認調達機関が同軍隊の当局の適当な証明書を附し
て日本国で公用のため調達する資材,需品,備品及び役務は,日本の次の租税を免除
される。


第十五条
 日本国に国際連合の軍隊を維持することに伴うすべての経費は,この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで同軍隊が負担しなければならない。但し,日本国政府の所有する施設で日本国政府により国際連合の軍隊の使用に供せられるものは,日本国によつて賃貸料その他の対価の免除を受けて提供されるものとする。

   第十六条

1 本条の規定に従うことを条件として,
(a)派遣国の軍当局は,当該派遣国の軍法に服するすべての者に対し,当該派遣国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。
(b)日本国の当局は,国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族に対し,日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によつて罰することができるものについて,裁判権を有する。

2(a)派遣国の軍当局は,当該派遣国の軍法に服する者に対し,当該派遣国の法令によつて罰することができる罪で日本国の法令によつては罰することができないもの(当該派遣国の安全に関する罪を含む。)について,専属的裁判権を行使する権利を有する。
(b)日本国の当局は,国際連合の軍隊の構成員,軍属及び家族に対し,日本国の法令によって罰することができる罪で当該派遣国の法令によつては罰することができないもの(日本国の安全に関する罪を含む。)について,専属的裁判権を行使する権利を有する。
(c)本条2及び3の適用上,国の安全に関する罪は,次のものを含む。
 (i)当該国に対する反逆
 (ii)妨害行為(サボタージュ),ちよう報行為{ちように強調}又は当該国の公務上若しくは国防上の秘密に関する法令の違反
3 裁判権を行使する権利が競合する場合には,次の規定が適用される。
(a)派遣国の軍当局は,次の罪については,国際連合の軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。
 (i)もつぱら当該派遣国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら当該派遣国に属する国際連合の軍隊の他の構成員,軍属若しくは家族の身体若しくは財産のみに対する罪
 (ii)公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪
(b)その他の罪については,日本国の当局が,裁判権を行使する第一次の権利を有する。
(c)第一次の権利を有する国は,裁判権を行使しないことに決定したときは,できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。第一次の権利を有する国の当局は,他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において,その他方の国の当局から要請があつたときは,その要請に好意的考慮を払わなければならない。
4 前諸項の規定は,派遣国の軍当局が日本国民又は日本国に通常居住する者に対し裁判権を行使する権利を有することを意味するものではない。但し,これらの者が当該派遣国に属する国際連合の軍隊の構成員であるときは,この限りでない。
5(a)日本国の当局及び派遣国の軍当局は,日本国の領域内における国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行使すべき当局へのこれらの者の引渡について,相互に援助しなければならない。
(b)日本国の当局は,派遣国の軍当局に対し,当該派遣国に属する国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族の逮捕についてすみやかに通告しなければならない。(c)日本国が裁判権を行使すべき派遣国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は,その者の身柄が当該派遣国の手中にあるときは,日本国により公訴が提起されるまでの間,当該派遣国が引き続き行うものとする。
6(a)日本国の当局及び派遣国の軍当局は,犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出(犯罪に関連する物件の押収及び相当な場合にはその引渡を含む。)について,相互に援助しなければならない。但し,それらの物件の引渡は,引渡を行う当局が定める期間内に還付されることを条件として行うことができる。
(b)日本国の当局及び派遣国の軍当局は,裁判権を行使する権利が競合するすべての事件の処理について,相互に通告しなければならない。
7(a)死刑の判決は,日本国の法制が同様の場合に死刑を規定していない場合には,派遣国の軍当局が日本国内で執行してはならない。
(b)日本国の当局は,派遣国の軍当局が本条の規定に基いて日本国の領域内で言い渡した自由刑の執行について派遣国の軍当局から援助の要請があつたときは,その要請に好意的考慮を払わなければならない。

8 被告人が本条の規定に従つて日本国の当局又は派遣国の軍当局のいずれかにより裁判を受けた場合において,無罪の判決を受けたとき,又は有罪の判決を受けて服役しているとき,服役したとき,若しくは赦免されたときは,政府がこの協定の当事者たる他の国の当局は,日本国の領域内において同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。但し,本項の規定は,派遣国の軍当局が当該派遣国に属する国際連合の軍隊の構成員を,その者が日本国の当局により裁判を受けた犯罪を構成した作為又は不作為から生ずる軍紀違反について,裁判することを妨げるものではない。
9 国際連合の軍隊の構成員,軍属又は家族は,日本国の裁判権に基いて公訴を提起された場合には,いつでも,次の権利を有する。
(a)遅滞なく迅速な裁判を受ける権利
(b)公判前に自己に対する具体的な訴因の通知を受ける権利
(c)自己に不利な証人と対決する権利
(d)証人が日本国の管轄内にあるときは,自己のために強制的手続により証人を求める権利
(e)自己の弁護のため自己の選択する弁護人をもつ権利又は日本国でその当時通常行われている条件に基き費用を要しないで若しくは費用の補助を受けて弁護人をもつ権利
(f)必要と認めたときは,有能な通訳を用いる権利
(g)当該派遣国の政府の代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち合わせる権利
10(a)国際連合の軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は,同軍隊の施設において警察権を行う権利を有する。国際連合の軍隊の軍事警察は,これらの施設において,秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。
(b)前記の施設の外部においては,前記の軍事警察は,必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし,且つ,日本国の当局と連絡して使用されるものとし,その使用は,国際連合の軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。
11 千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の行政協定の千九百五十三年九月二十九日に東京で署名された議定書により改正された第十七条の規定が更に改正される場合には,この協定の当事者は,協議の上,本条の対応規定に同様の改正を行うものとする。但し,当該派遣国に属する国際連合の軍隊が,その更に行われた改正をもたらした事情と同様の事情の下にある場合に限る。
12 千九百五十三年十月二十六日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書及びその附属書は,日本国政府と同議定書に署名したこの協定の他の当事者との間において,この協定が当該当事者について効力を生ずる日に効力を失う。

   第十七条

 この協定の当事者は,国際連合の軍隊,同軍隊の構成員,軍属及び家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため随時必要となるべき措置を執ることについて協力するものとする。日本国政府は,日本国の領域において国際連合の軍隊の工作物,備品,財産,記録及び公務上の情報の十分な安全及び保護を確保するため,並びに適用されるべき日本国の法令に基いて犯人を罰するため,日本国政府が必要と認めるところに応じ,立法を求め,及びその他の措置を執るものとする。

   第十八条

1 この協定の各当事者は,その軍隊の構成員又は文民たる政府の職員が公務の執行に従事している間に日本国において被つた負傷又は死亡については,その負傷又は死亡が公務執行中のこの協定の他のいずれかの当事者の軍隊の構成員又は文民たる政府の職員によるものであるときは,その他方の当事者に対するすべての請求権を放棄する。
2 この協定の各当事者は,日本国において所有する財産に対する損害については,その損害が公務執行中のこの協定の他のいずれかの当事者の軍隊の構成員又は文民たる政府の職員によるものであるときは,その他方の当事者に対するすべての請求権を放棄する。
3 契約による請求権を除く外,公務執行中の国際連合の軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は国際連合の軍隊が法律上責任を有するその他の作為,不作為若しくは事故で,非戦闘行為に伴って生じ,且つ,日本国において第三者を負傷させ若しくは死亡させ,又はこれに財産上の損害を与えたものから生ずる請求権は,日本国が次の規定に従つて処理するものとする。
(a)請求は,請求権が生じた日から一年以内に提起するものとし,日本国の被用者の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従つて審査し,且つ,解決し,又は裁判する。
(b)日本国は,前記のいかなる請求をも解決することができるものとし,合意され,又は裁判により決定された額の支払を日本円で行うものとする。
(c)前記の支払(合意による解決に従つてされたものであると日本国の権限のある裁判所による裁判に従つてされたものであるとを問わない。)又は支払を認めない旨の日本国の権限のある裁判所による確定した裁判は,拘束力を有する最終的のものとする。
(d)(a),(b)及び(c)に従い請求を満たすために要した費用は,この協定の当事者が次のとおり分担する。
(i)一派遣国のみが責任を有する場合には,合意され,又は裁判により決定された額は,その七十五パーセントを当該派遣国が,及びその二十五パーセントを日本国が分担する。
(ii)二以上の派遣国が共同に責任を有する場合には,合意され,又は裁判により決定された額は,当該派遣国の分担額がこれらの国の間において均等となり,且つ,日本国の分担額が当該派遣国の一の分担額の半分となる割合で分担する。
(iii)負傷,死亡又は財産上の損害が二以上の派遣国の国際連合の軍隊により生じ,且つ,その責をいずれかの国際連合の軍隊に特定的に帰することが不可能である場合には,すべての当該派遣国は,その負傷,死亡又は財産上の損害の原因について責任があるものとみなされ,前記の(ii)の規定が適用される。
(e)日本国が本項に従つて承認した又は承認しなかつたすべての請求の明細,各事件についての認定及び日本国が支払つた額の明細は,定められるべき手続に従つて,当該派遣国が支払うべき分担額の要請とともに,その派遣国に定期的に送付する。その支払は,できる限りすみやかに日本円で行わなければならない。4 この協定の各当事者は,前諸項の実施に当り,その人員が公務の執行に従事していたかどうかを決定する第一次の権利を有する。その決定は,当該請求権が生じた後できる限りすみやかに行わなければならない。他のいずれかの当該当事者がその決定に同意しなかつたときは,その当事者は,協議のためこの問題を合同会議に付託することができる。

5 日本国内における不法の作為又は不作為で公務執行中に行われたものでないものから生ずる国際連合の軍隊の構成員又は被用者に対する請求権は,次の方法で処理するものとする。
(a)日本国の当局は,当該事件に関するすべての事情(損害を受けた者の行動を含む。)を考慮して,公平且つ公正に請求を審査し,及び請求人に対する補償金を査定し,並びにその事件に関する報告書を作成する。
(b)その報告書は,当該派遣国の当局に交付するものとし,その当局は,遅滞なく,慰しや料{しやに強調}の支払を申し出るかどうかを決定し,且つ,申し出る場合には,その額を決定する。
(c)慰しや料{しやに強調}の支払の申出があつた場合において,請求人がその請求を完全に満たすものとしてこれを受諾したときは,当該派遣国の当局は,自ら支払をしなければならず,且つ,その決定及び支払つた額を日本国の当局に通知する。
(d)本項のいかなる規定も,支払が請求を完全に満たすものとして行われたものでない限り,国際連合の軍隊の構成員又は被用者に対する訴を受理する日本国の裁判所の裁判権に影響を及ぼすものではない。
6(a)国際連合の軍隊の構成員及び被用者(日本の国籍のみを有する被用者を除く。)は,3に掲げる請求については,日本国においてすべての種類の事件については,日本国の裁判所の民事裁判権に服するものとする。
(b)国際連合の軍隊が使用している施設内に日本国の法律に基き強制執行を行うべき私有の動産(国際連合の軍隊が使用している動産を除く。)があるときは,当該派遣国の当局は,日本国の裁判所の要請に基き,その財産を差し押えて日本国の当局に引き渡さなければらなない。派遣国の当局は,当該派遣国に属する国際連合の軍隊がその差押及び引渡を行う法律上の権限を有しない場合には,日本国の当局が日本国の法律に従つて前記の財産を差し押えることを許容しなければならない。
(c)すべての派遣国の当局は,本条の規定に基く請求の公平な審理及び処理のため証人及び証拠を提供することについて,日本国の当局と協力しなければならない。

   第十九条

 この協定の当事者は,この協定の実施のため必要な立法上,予算上その他の措置をできる限りすみやかに執らなければならない。

   第二十条

1 この協定の解釈及び実施に関する事項についての日本国政府とこの協定のその他
の当事者との間の協議及び合意の機関として,合同会議を東京に設置する。

2 合同会議は,日本国政府を代表する者一人及びこの協定のその他の当事者を代表
する者一人の二人の代表者で組織し,各代表者は,一人又は二人以上の代理及び職員
団を有するものとする。合同会議は,その手続規制を定め,並びに必要な補助機関及
び事務組織について取りきめる。合同会議は,いずれか一方の代表者の要請があつた
ときはいつでも会合することができるように組織するものとする。

3 合同会議がなんらかの問題について合意に達することができないときは,その問
題は,政府間の交渉によつて解決するものとする。

   第二十一条

1 この協定は,日本国政府及び統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府が署
名するものとし,また,国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しており又は将
来派遣するいずれの国の政府も署名することができるものとする。この協定は,その
最初の署名からその最初の効力発生までの間,日本国政府の同意を条件として,前記
の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しており又は将来派遣する他のいずれの国の政府
のためにもその署名のため開放されるものとする。

2 この協定は,日本国政府がこれを受諾する日の後十日で,日本国政府について,
及び,日本国政府による受諾の日以前に,この協定に受諾を条件としないで署名し,
又は「受諾を条件として」署名の上これを受諾する政府について効力を生ずる。この
協定は,日本国政府による受諾の日の後に,この協定の受諾を条件としないで署名し
,これを受諾し,又は「受諾を条件として」署名の上これを受諾する各政府について
は,その政府がこの協定の受諾を条件としないで署名する日の後十日で,又はその政
府が「受諾を条件として」署名の上これを受諾する日の後十日で効力を生ずる。

3 この協定の受諾は,受諾書を日本国政府に寄託することにより行うものとする。
日本国政府は,この協定の当事者たる各政府にすべての署名の日及び,受諾書の寄託
が行われるときは,その寄託の日を通告するものとする。

4 この協定の規定は,第十六条の規定及びその性質上そ及{そに強調}が不可能で
ある規定を除く外,日本国政府及び,この協定の最初の署名の日に又はその日の後六
箇月以内に,この協定に受諾を条件としないで署名し,又は「受諾を条件として」署
名の上これを受諾する他の各政府については,千九百五十二年四月二十八日から適用
するものとする。

   第二十二条

1 第二十一条2に従つてこの協定が最初に効力を生じた日以後においては,国際連
合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しており又は将来派遣する国の政府でこの協定
に署名していないものは,日本国政府の同意を条件として,日本国政府に加入書を寄
託することによりこの協定に加入することがきる。

2 日本国政府は,この協定の当事者たる各政府にすべての加入書の寄託の日を通告
するものとする。

3 この協定は,加入政府については,それぞれの加入書の寄託の日の後十日で効力
を生ずる。

4 この協定の規定は,第十六条の規定及びその性質上そ及{そに強調}が不可能で
ある規定を除く外,この協定の最初の署名の日の後六箇月以内に加入書を寄託する各
加入政府については,千九百五十二年四月二十八日から適用するものとする。

   第二十三条

1 この協定の各当事者は,いずれの条についてもその改訂をいつでも要請すること
ができる。その要請があつたときは,日本国政府と統一指令部として行動するアメリ
カ合衆国政府(この場合,当該派遣国と協議し,且つ,その派遣国を代表するものと
する。)とは,交渉を行うものとする。

2 1953年九月二十九日に東京で署名された議定書により改正された1952年二月二十
八日東京において署名の日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の行政協定のいずれ
かの規定が改訂されるときは,第十六条11に定める場合を除く外,日本国政府と,
統一指令部として行動するアメリカ合衆国政府(この場合,当該派遣国と協議し,且
つ,派遣国を代表するものとする。)とは,この協定の対応規定について同様の改訂
を合意するため交渉を行うものとする。

   第二十四条

 すべての国際連合の軍隊は,すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなけれ
ばならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事
者は,すべての国際連合の軍隊の日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれ
かの日を合意することができる。

   第二十五条

 この協定及びその合意された改正は,すべての国際連合の軍隊が第二十四条の規定
に従つて日本国から撤退しなければならない期日に終了する。すべての国際連合の軍
隊がその期日前に日本国から撤退した場合には,この規定及びその合意された改正は
,撤退が完了した日に終了する。

 以上の証拠として,下名は,各自の政府から署名のために正当に委任を受け,この
協定に署名した。

 1954年二月十九日に東京で,ひとしく正文である日本語及び英語により本書一通を
作成した。この原本は,日本国政府の記録に寄託する。日本国政府は,その認証謄本
をすべての署名政府及び加入政府に送付するものとする。

日本国政府のために

 岡崎勝男  (署名)

   受諾を条件として

統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府のために

 J・グレイアム・パースンズ(署名)

 国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣している国の諸政府

カナダ政府のために

 R・W・メイヒュー(署名)

   受諾を条件として

ニュー・ジーランド政府のために

 R・M・ミラー(署名)

   受諾を条件として

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府のために

 エスラー・デニング(署名)

南アフリカ連邦政府のために

 エスラー・デニング(署名)

   受諾を条件として

オーストリア連邦政府のために

 E・ロナルド・ウォーカー(署名)

フィリピン共和国政府のために

 ホセ・F・イムペリアル(署名)

フランス共和国政府のために

 ダニエル・レヴィ(署名)

   1954年四月十二日

イタリア政府のために

 B・L・ダイェータ(署名)

   1954年五月十九日

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